男性不妊の原因②~大学病院での治療法~

動画内容書き起こし

刀禰:中長期的なトレンドとして、昔の方々よりも今の若い方々の方が精子の量が、運動率が下がっているという話も何か耳にしたことがありますが、いかがでしょうか。

浜谷先生:そういう論文も確かにあります。
ただ、否定する論文もあって一概にそこは結論が出ていないと思います。

刀禰:結論が出ていないのですね

浜谷先生:ただ、技術が進歩して見つからなかったものまで見つかるようになった事例はあります。例えば無精子症というと、精液が出ていないと思うかもしれませんが、精液はちゃんと出ています。射出もちゃんとできるのですが出てきた精液の中に活発な精子がいないというのが無精子症の特徴になります。

:そうなると男性本人も気づきにくいですよね。

浜谷先生:そうなのですね。
調べてみないとわからないものなので、それでもし無精子症だったら絶望する事勿れ、まだ次のステップがありますので、泌尿器科の先生方にも相談して精巣から精子をとれることも多々あります。
なので、そういったことも今はできるようになっております。
Micro-TESEというのですがそういった手術によって精子を回収して顕微授精をして子どもにつながるということはよくあることです

:よくあることなのですね

浜谷先生:そうですね、Micro-TESEの後に顕微授精をして妊娠するというのは慶應でもしっかり取り組みます。全員が大丈夫とは言い切れないのですが、ある程度の数がちゃんと精子回収できれば、妊娠には前向きになれると思います。

:無精子症になった方の中で精巣から精子をとることに成功する人は、何割ぐらいなんですか?

浜谷先生:ものにもよるのですが、例えばスポーツ外傷とかで脊髄を損傷されて射出ができなかったような人はほぼ100%回収できます。射出ができなくても、精巣には精子がきちんとありますので。
そういった方もいらっしゃいますが、普通に射出できている中で遺伝子の異常などがどこかにあったりする方もいらっしゃいます。
精子が全然出ていないという方は、まず遺伝子の検査をしてその検査によってはMicro-TESEはやらないで、もう諦めてくださいという時もありますが、Micro-TESEをやればかなりの確率で回収できるから頑張りましょうという場合もあります。
まず、遺伝子検査の結果次第になるかと思います。
AZFといった遺伝子に傷があると回収できる場合、回収できない場合というのがはっきりしてきます。また全染色体が1本多かったり少なかったり、そういった方もいらっしゃいます。

刀禰:先程先生もおっしゃっていましたが、クリニックよりも慶應大学、大学病院の方がこういった男性不妊に対応しているという話もおっしゃっていたんですけどもそういったところではやはり、一日の長があると研究機関も充実しているのでしょうか。

浜谷先生:そうですね、不妊クリニックの中でもそういった方向性をすごく伸ばしているクリニックもあります。
そういったところと比べるのと別に、こちらがいいというアドバンテージがあるとは思ってはいませんが、クリニックによって一般の不妊クリニックよりはいろいろな展開ができるのと思います。

刀禰:公益性というか大学病院の立場からも?

浜谷先生:そうですね、商業的な概念ではなくやっぱりエビデンスに基づいた医療が行われているという安心感は持っていただけるのではないかと思います。
あと話がちょっとずれてしまいますけれどもがん生殖という領域もありまして。

刀禰:がん生殖?

浜谷先生:がんにかかりまして、これから抗がん剤が必要だといったときに精子を凍結保存しておいてほしいとか、あとは卵子をとっておいてほしいなどそういう方への対応はやっぱり大学病院だからこそ迅速に治療を遅らせることなく、卵子をとってあげたりとか精子を保存しておいてあげたりとかすることが可能かと思います。
かなり大学病院としての社会的使命感を持ってやっています。

刀禰:今回は、先生の方に男性不妊について少しいろいろ教えていただきました。どうもありがとうございました。

浜谷先生:ありがとうございます。

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