黒田メソッドについて~オーダーメイド治療の重要性~

動画内容書き起こし

:皆さん、こんにちは。今日も黒田優佳子先生に お話を伺います。先生、よろしくお願いいたします。

黒田先生:よろしくお願いいたします。

刀禰:よろしくお願いいたします。

:ここまで男性不妊についていろいろ教えていただきましたが、先生の治療の特徴といいますか、教えていただけますか。

黒田先生:まず、今一般的になされている不妊治療の流れをお話し申し上げますと、生殖補助医療の約8割を顕微授精が占めている状況になりますが、まずは『卵子が先』という治療モデルなんですね。
具体的に申し上げると、まず『即、採卵をしよう』という運びから入ります。精子は1匹いれば顕微授精で受精が可能という考えが定着していますね。ですから、まず卵を取って卵子が確保できたら顕微授精に持っていけばすぐ治療は成立するという、卵子先の主導型ですね。私のやり方というのは全く逆になりますね。『精子が先』にやるという形の新しい治療モデルを提唱しているという形になります。

:というのは、精密検査からということですね。

黒田先生:そうですね。卵子が先っていうやり方の画一的なやり方は、うまく運良く良き結果にすぐ当たればいいんですけれども、なかなかそれは正直なところ効率が悪いんですね。

:ここまでに教えていただきました。

黒田先生:それは「不妊である」ということは、あくまでも奥様とご主人様のいろいろな原因が複雑に絡み合っている一つの「結果」になるんですね。
背景もそれぞれのご夫婦で違いますよね。一括りで画一的な治療で結果に持っていくっていうことには正直矛盾があるというか、無理があるんですね。
ですから本来は、不妊であるというのは個々のご夫婦で病態の内容は違いますので、そのご夫婦に見合った治療法をちゃんと確立し、そのご夫婦によって当然 治療に伴うリスクや成功率というのは発生してきますので、『個別化した究極のオーダーメイドであるべき医療が不妊治療』というのが正確な表現になるんですね。
ですので 私は、精子の、まず おっしゃっていただいたように、細かい、見た目だけじゃなくて中の隠れた精子異常をしっかり調べるということで、精子の要は『実効偏差値』という言葉を私は使っていますが、見掛け倒しじゃなくて本当の地頭の良さですね、精子の実質の偏差値というものをしっかり分子生物学的な手法で見極める。
ですから最初の段階で、この精子は こういうEBM科学的根拠を持っているこういうタイプの精子だぞ、ということの詳細な情報をガチッと取るわけですね。

それによってまず精子側から安全な命を誕生させる生殖補助医療の治療の土俵に乗れるかという、要は『適応基準に対しての明確さ』をまず出します。
土俵に乗ったとなったらば、この精子のタイプだったら生殖補助医療のどういう技術、うちに特化した精子側の技術でもたくさんありますけど その技術をどう組み合わせていけば その精子に一番適正 なおかつ 有効化できる形で治療が進められるかという『精子のタイプにあった個別化技術プラン』みたいなものを確立する。
そこで治療の方向性が決められることによって、健常な赤ちゃんを誕生させる半分の責任の『卵子側としてこういう角度から攻め抜くのが良かろう』というのを臨床経験の経験値も踏まえていろいろ条件を見極めた上で治療に着手する、というようなやり方をしております。

ですからちょっとストレートな言い方をすれば、精子のEBMに基づいて詳細情報を精密検査で取ることによって「治療にまず安全に乗れるか乗れないか」というところの「適応基準を明確にする」ことでの『入り口戦略』がまずしっかりできるんですよね。その後に「適正化、効率化」というところに進められるので、成功に かなり近づくことは条件を詰めていくことによってできます。

一方『精子が先』という攻め方をすることによって、他でたくさん治療をされた結果、顕微授精を反復してもなかなか結果にならないで、ご苦労したご夫婦というのもたくさんお訪ねいただきますけれども、そういう方々に対しても『精子が先』のやり方をすることによって、これから先も治療を続けていっても精子側から成功する可能性があるタイプなのか、そうじゃないのかという点。
もちろん厳しい結果の時は辛いですけれども、逆に『治療のやめ時』という言い方が正しいかどうか分からないですけれども。
やはり顕微授精を反復してもう辞められない、終わりのない辛い不妊治療に陥ってしまっているご夫婦というのも世の中結構いらっしゃいますので。
そういう方には、辛いですけど『精子が先』のやり方をしていただいて、今頃わかったところでなのですが、エビデンスがしっかり出ることによって、「これでは これ以上継続してもなかなか厳しい」というように『治療の断念』と言いますか『治療限界』ですよね。
そういったものもやはり、納得していただくための科学的根拠EBMもしっかり出すということで、精子側が先という新しい治療スタイルというのは、まさにオーダーメイド化個別化治療する不妊病態というものに対する適正度は高いと考えて、私はライフワークが精子学というのもありますけれど、『精子から攻める』という一般の治療の仕方とは全く逆からの攻め方でやっているというのが一つの黒田メソッドのスタイルになりますね。

刀禰:精子が有効か有効じゃないかを、エビデンスレベルで出すことによって、「今後も治療を継続するべきなのか否か」みたいなことも含めたアドバイスを先生のクリニックでは主体としてやっていらっしゃるということですね。

黒田先生:やはり『治療の見通し』というものを立てて差し上げないと。「いつかはできる」という夢を追って、「みんなが不妊治療の土俵に乗れる」「みんなが妊娠できる」というようなビジョンで進んでしまっているのも、悲しいか現状ありますので。
やはり、辛いですけど、悲しすぎる現実の継続というよりは、見通し、このまま辛い不妊治療でも続けてもその価値という言い方が正しいかは分からないですけれども、やはり結果につながる可能性が少なくともあるのか、攻め方の条件が悪かったから結果にならないので 条件をちゃんとその方に見合った形でし直せばかなり成功率が上がるとかということの見通しを ある程度予測して、それを しっかりした科学的根拠EBMで出してあげるというのが、本来の医者のやるべき姿だと私は考えています。

刀禰:感動しました、その通りだと思います。

黒田先生:厳しいデータの時は申し上げるのも心が痛みますけど、「いつかはできる」というような現実から、私は1日も早く回避していただくために、そういう「精子先という形でのエビデンスをもっての治療指針」でやっております。

刀禰:逆にいうと、少しリスクサイドばかり先生がおっしゃっていたのですが、可能なところもよくわかるという話なんですね。
というような、黒田先生のアプローチという形ですね。

:黒田メソッドを教えていただきました。
そして治療も今年2022年の4月から保険適用にもなりましたが、そのあたりも次回伺いたいと思います。引き続き よろしくお願いいたします。

黒田先生:ありがとうございます。

刀禰:ありがとうございます。

同じカテゴリの記事