保険適応を解説②~今後の課題と展望~

動画内容書き起こし

吉村先生:4月からまずこれを見てないと実際に運用されてクライアントさんが、どうおっしゃるか、ということが今後の課題です。もう一つの問題点は年齢に関してです。特定不妊治療助成というのは、はじめは所得制限があった、43歳未満しか受けられなかった。
40歳未満と43歳未満では受けられる回数も違いますね。6回と3回ですよね。
これは私が座長をしているときに、これまでは10回で年齢制限のなかったものを、年齢と回数制限を設けました。そうするとマスコミとか患者さんの団体からお叱りを受けたわけですね。
なぜ10回できたことができないんだと、どうして43歳以上はできないんだと43歳を超えたら体外受精をしてはいけないのか、というようなことでよく批判されました。特定不妊治療助成で集めたデータを見ますと、それまでの数十年間のデータを見てみると、40歳以上で妊娠している人はほとんどいなかった、それから妊娠する人は6回までで妊娠していたんです。
こういったエビデンスをもって43歳にしました。助成金は税金から出ているわけだから、妊娠の確率の低い43歳以上で体外受精を受けたいと思う方は自分のお金を払って受けてもらえますか?ということで納得していただいたんですよ。
ところが、それと同じことを今回の保険制度に適用してるんですよ。自分で保険料を払っているのに43歳以上の人は保険を受けられない。こういったことについても4月からはじまると、必ずおっしゃる方が出てくると思います。この不妊症の保険適用について、野田聖子大臣が議連を通じてやられたんですけど、お会いした時にもお話しました。やっぱり44歳であっても45歳であっても自分で保険料を払っているわけですから、自分たちが受けられないのはおかしいじゃないのということをおっしゃることはあるかもしれませんねと。これもちょっと今後の検討課題だというふうに思っています。

刀禰:素人ながら、一筋縄では行かないだろうなと、ずっと想定していましたしいわゆる先進医療とか自由診療だったりというのを標準化できたとしてもいろいろクリニック、ほんとやり方が結構違うじゃないですか?

吉村先生:不妊症の保険適用は、非常に難しいと思っていました。困難性を考えると、よく厚生労働省はこういったものをつくったな、というふうに僕は思いますね。
これが完全な制度だと思っていませんが。
やっぱり特定不妊治療助成みたいなもので助成していくというのが私はいいのではないかこれまで通りがいいのではないか、と今でも思っています。しかし、患者さんが望んでおられるわけですから、まずいったんやってみることが大切です。
40年も自由診療をやってきたのを保険適応にしたというのはこれは初めてのケースですね。
やっぱりこれはいろいろな問題点が出てくることは必至でないですかね。
刀禰さんも実際に治療されているから、特にこれを標準治療にするということは難しいだろうなということは想像されていたんですね。
けれども、いろいろな意見を受けてこの保険適用が決められました。この保険適用の決め方というのはものすごく細かいですよ。
顕微授精を何個やったかによっても値段が違うわけですし、丁寧なステップを踏んで精緻なシステムをお作りになったというように思います。

刀禰:まだ僕ら患者さんが望んでいるような保険適応みたいな形に最終的に便益というのは目の前のお金が減るということは、まだよくわからないという?

吉村先生:おそらく予想としては1、2割減るかも減るだろうということが想像できますが、実際に自分が治療を受けたいという治療を受けると、こんなはずではなかったという患者さんは出てくるんじゃないでしょうかね。もっと便益を受けるだろうと思っていたというふうにおっしゃる人が出てくるんじゃないですかね。
だから刀禰さんがやってこられたように、最先端のすべてのものをやってきた先進医療が入っているものをやっておられると結構なお金を払わなくてはいけないと思います。
皆さんがどうおっしゃるかお伺いするのはよろしいんじゃないですかね。
こういったものというのは一旦決めると硬直的にずっと行っちゃうんですけど、やっぱり2年後に見直しとかですね、そういったことは当然大事なことじゃないですかね。
特定不妊治療助成制度というのは、できてから数回変わっているんですね。これは、その都度患者さんや医療者の意見を考えて 変わってきていました。しかし保険制度ということになるとなかなか変わらないんですよね。
それからこれから査定ということも出てきますよね、国保と社保というのがあるんですが、二つの保険があるんですけど、社保の場合はあまり査定されることがないんですけど、国保の場合は、保険組合の経済的な理由というのはもちろんあるでしょうけど、査定ということが起こってきます。結構な割合でお医者さんたちが査定されて自腹を切らなくちゃいけないということになってくると、経営が難しくなってという感じになってくるかもしれない。

刀禰:薄々感じていたけれど、やはり標準化は難しそうなので、引き続きお金に関する問題というのは出てきたり、あと今回はちょっと保険適用なのでお金の話なんですけど両立支援なんかも含めてまだまだ課題が少なくない?

吉村先生:ただ、この機会にもう一つ言っておきたいことは治療と仕事との両立に関しては出生サポート休暇という制度があります。

刀禰:国の制度ですか?

吉村先生:国の制度です。みんなまだ知らないと思います。出生サポート制度というのは不妊治療をやっています、ということを会社に言えば、有給休暇を取れる出生サポート休暇というのがあります。少ないんですけど、5日取ることができ、体外受精や顕微授精する場合は10日、それも時間単位に取れるんですね。
例えば1日2時間であれば1日が4回として使えるわけですよね。そうすると最高40回ぐらいは使えるわけです。人事院が勧告を出して出生サポート休暇を作って、まず国家公務員にやってみましょう、これは去年の4月からはじめられています。
こういったものができるということは大変いいことじゃないかと思います。一般の企業にも伝わっていけば、企業で働いている女性の方も有給休暇を自由に取れる。ご存知だと思いますけど、不妊治療って女性が仕事をしながら続けることは大変だと思います。

刀禰:大変だと思います…

吉村先生:大変でしょう。不妊治療では、いつ病院に行くかということは決まっていないわけですし、体外受精するとなったら1ケ月に7、8回は行かなくちゃいけないですしとなると、なかなか仕事との両立は難しくなります。

刀禰:難しいと思いますね。

吉村先生:だからそういったことに対するサポートも今後は必要になってくるんじゃないですかね、

刀禰:母体として、メンタルヘルステクノロジーズは、産業保険の分野をやっているので女性の働きやすい環境を作っていくか、という仕事も当然しているので。

吉村先生:そういうのをご専門でしょうから、一般の企業でこの出生サポート休暇というものをやっぱり国がやり出したんだから、企業でもやりましょうと。女性活躍のためにも大いに進めていっていただきたい。

刀禰:もちろんですね。不妊治療の保険適用について吉村先生が思うことという形でいろいろと教えていただきました、ありがとうございます。

吉村先生:どうもありがとうございました。よろしくお願いします。

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