精子・卵子の凍結保存後の流れを解説


精子と卵子の凍結をおこなった場合、凍結した後はどのような流れになるのか知っておくとイメージがしやすいでしょう。精子と、卵子(未受精卵)を凍結した際には、受精の後移植を行い、妊娠、出産へと繋がることが理想です。
出産に至るまでにどういった経緯を経て、受精卵になるのか、その手順や移植に至らなかった胚についても考えてみましょう。

■精子・卵子の凍結後、移植までの期間について
精子と卵子を凍結した場合、受精させて、最短では卵子を凍結した次の周期に移植することができます。生理周期が28日であれば、生理が始まって2週間後が排卵時期になりますので、新鮮杯であればその3日後、胚盤胞であれば5~6日後に移植することができます。

しかし、受精卵ではなく精子と未受精卵として凍結しているということは、何か事情があるでしょう。精子も卵子も-196℃で凍結保存します。半永久的に保存しておくことができますので、必要なタイミングで移植することが可能です。長く保存しておくとその分料金がかかること、胚は凍結しておけますが、母体である女性の体は年齢を重ねますので計画を立てておくことも大切です。

■凍結した精子・卵子の移植による妊娠率とその予測方法
凍結した精子・卵子を使用して妊娠を希望する場合には、体外で受精させて受精卵として移植する必要があります。
妊娠率は女性の年齢に大きく左右されますが、受精卵を移植する場合には卵子を凍結した時の年齢として妊娠を期待することができます。30歳で凍結した精子と卵子を40歳で移植した場合には、母体年齢が40歳であっても、30歳の妊娠率、流産率と考えてよいでしょう。
もちろん、生まれてから育てるにあたって、若い方が体力には余裕があります。

精子と卵子をそれぞれ凍結している場合、受精方法は顕微授精で行います。受精した直後に凍結した新鮮胚と受精後に分割が始まって、胚盤胞になってから凍結した胚を移植するケースがあり、日本産婦人科学会ARTデータブック2020年では以下のように発表されています。

女性の年齢 凍結初期胚 凍結胚盤胞
28 32.5% 52.5%
29 30.9% 51.6%
30 30.0% 50.9%
31 30.7% 50.4%
32 30.0% 50.7%
33 32.6% 49.3%
34 28.2% 47.8%
35 29.9% 47.2%
36 27.2% 45.2%
37 25.7% 43.1%
38 23.7% 40.5%
39 22.4% 37.7%
40 17.9% 34.5%
41 15.7% 29.7%
42 12.9% 25.6%
43 9.0% 21.8%
44 6.6% 17.6%
45 3.7% 12.8%
46 2.8% 9.7%
47 1.7% 9.8%

■精子・卵子の凍結後に起こりうる合併症とその対処法

・男性
マスターベーションによる出血や、感染などのリスクの向上はほぼなく、移植についても融解した精子を使用するので男性に負担や合併症のリスクはありません。

・女性
体外受精・胚移植について、女性側にはさまざまな合併症のリスクがあります。
1.卵巣過剰刺激症候群 要入院 0.5~0.8%
2.細菌感染 0.3~0.6%
3.臓器損傷 0.1%
4.大量出血 0.1%
5. 血栓症 1%未満
6. 麻酔の副作用 1%未満
7.多胎 約3%
8.流産 20~30%
9.異所性妊娠 約5%
10. 悪性腫瘍の進行
上記以外にもリスクがあり、それぞれの確率は低くても女性への負担は大きいと言えるでしょう。

■不要になった精子・卵子の廃棄方法とその意義
凍結した精子や卵子は、多くの場合保存の延長ができます。医療機関によって値段が異なりますが、1年ごとなど定められた期間で料金を支払い、移植をするまで延長ができます。延長のタイミングで破棄を選ぶこともでき、特に来院などは必要ありません。用紙に破棄の旨記載し投函すれば完了です。
何らかの理由で妊娠が難しくなった場合や、希望をしなくなった場合、もしくは妊娠、出産が叶い、それ以上の妊娠を望まない時には破棄を選ぶことになるでしょう。

卵子については破棄の年齢が決まっている病院もあれば、精子や卵子を採取した本人が死亡した場合には、破棄をすると定めているところもあります。
死亡した夫の凍結精子を体外受精させることは「死後生殖」と言い、法的に禁止はされていませんが議論が行われています。

■まとめ
精子と卵子(未受精卵)の凍結後の流れについて理解できたでしょうか。凍結の後、融解、受精が成功したら移植の流れになります。受精卵として凍結させる場合には、受精後に凍結します。凍結後、移植をすぐにしない場合には保存を延長。もし不要になった場合には、自分の意思で破棄することもできます。
精子や卵子の凍結はゴールではありません。その先にある妊娠・出産を目指して、若いうちに精子・卵子の凍結を行い、将来に可能性を残すのはひとつの選択肢となるでしょう。

はらメディカルクリニック 不妊症の検査・治療
日本産婦人科学会ARTデータブック2020年
リプロダクション東京
朝日新聞(岡山大学)
Wikipedia 死後懐胎子

同じカテゴリの記事