造精機能障害の基礎①~3つの原因~
動画内容書き起こし
橘:皆さん、こんにちは。今回も黒田優佳子先生に お話をお伺いします。先生、よろしくお願いいたします。
黒田先生:お願いいたします。
刀禰:よろしくお願いいたします。
橘:今回は、造精機能障害について教えていただくのですが、読んで字の如く『精子を造る』と書いて『造精機能障害』、これ、そもそもどういうことなんですか。
黒田先生:簡単に申し上げると、精子をうまく造ることができないことですね。
ですから、精子に何らかの問題、異常を持ってしまっている状態を造精機能障害と呼びますね。
橘:全く造れない状態だけではなくて、造れるけれども、造れた精子に異常があるとかということも含めて。
黒田先生:もちろんそうですね。そういうことも含めて、ありますね。
大きく、造精機能障害で精子をうまくつくれない場合には、3つのケースがあるんですね。
1つ目はですね、元々は精巣で精子をつくりますよね。精巣の機能も正常で その結果、正常な精子をしっかりつくることができた。ただ後天性環境因子ですね。生まれた後に、よくみなさん耳にすると思いますが、小さい時におたふく風邪にかかって高熱が数日出てしまったりとか、大きな病気をして精子にダメージを与えるような薬剤性の治療をしなくてはならなかったとか、あと泌尿器科的な基礎疾患で頻度として多いのは精索静脈瘤といういわゆる血管の異常ですね。
そういったものが後天的に関わることによって二次的に、元々は精子が問題なかったんだけど 結果として具合が悪くなってしまうというのが1つ目のケースですね。
刀禰:それが1つ目なんですね。
黒田先生:2つ目はですね、生まれながらにして正常な精子を造る、その製造ラインというのを本当にごく一部しかなくて生まれてきてしまったというケースの方が2つ目のケースで。3つ目というのは 一番これは辛い現実ですが、お母さんのお腹にいる時に先天的に精子を造るための遺伝子、色んな遺伝子が関わりますが、その遺伝子に異常があって結果として精子を造ることができないという、要は先天異常の場合が3つのケースになります。
実際不妊治療の現場に上がってくる男性不妊の方の精子のタイプというのは、残念ながら3つ目のケースの先天異常の方が多いというのが実状ですね。
刀禰:よく袋を温めちゃいけないとか、食べ物に気をつけなきゃいけないとか、衣食住とか、睡眠含めてちゃんとしましょうというような話も聞くのですが、それって関係があるんですか。
黒田先生:そうですね、よっぽどですね、ストレスがかかって過労な状況で睡眠が少ないとか、今おっしゃったように暴飲暴食とか、常に循環が悪いような下着のみならずタイトなものをお召しになっているとか、そういうことであれば、やはり少しは身近な生活習慣的なものを改善するということは、血液循環をよくして、精神的にも休んで、食事のバランスを取ってというのはもちろん大事ですが・・・
今申し上げましたように精子にいろいろな問題が起きてくる場合というのも、先天性の遺伝子の問題が関与しているというのがほとんどですので、残念ながら、身近な生活習慣を改善してということで、直結して精子の状態がよくなるという方の比率というのは極めて低いというのが実状です。
刀禰:なぜ言われているのでしょうか。
黒田先生:うちにもいらしてくださる、まず初診でいろいろなカウンセリングをする時に伺うんですが、まず100%と申し上げていいほど男性の方は、うちにみえる方は男性不妊の方が多いというのもありますけれども、精子サプリと称する「これを飲んだら精子が増える?」「これを飲んだら精子が元気になる?」というものをお飲みになっているんですね。
ですけど、サプリメントというのは基本的には法律で決まっている医薬品ではないですから、補助する、要は食品としての定義付けのものですよね。だから、そんなにドラマティックな効果があるのではないですけれども・・・
今申し上げたように精子異常の背景には、遺伝子異常が関与している場合がほとんどである実状にあたり、なかなかサプリメントで よくなるということは現実問題ほとんどないという理解が正しいですし、サプリメントを長期にわたって飲むことによって二次的な被害ですね、身体の状態が逆に悪くなるという場合もありますので。
あまりコマーシャルベース基づいていろいろなサプリメントが言われていますけど、あれも、これも、それも、というのは、個人的には精子を専門にする者の立場からは お勧めはしないというふうにお伝えしたいと思います。