顕微授精の限界①~精子選別の実態~

動画内容書き起こし

:皆さん、こんにちは。引き続き、黒田優佳子先生にお話を伺います。先生、お願いいたします。

黒田先生:お願いいたします。

刀禰:お願いいたします。やはり男性不妊と聞くと一番初めに思いつくのは顕微授精なんですけども、顕微授精は先ほどの動画を撮る前に いろいろ話をさせていただいていた時に「いろいろなリスクや真実を知る必要がある」というような話をおっしゃっていたんですけれども、どういった話なんでしょうか。

:ちょっと待ってくださいね。顕微授精の復習をしていいですか。体外受精で卵子に精子をかけて自然に受精するのを待つパターンと、卵子に直接精子を注入という形があるんですよね。後者の方を顕微授精と言う、ということであっていますか。

黒田先生:あっています。

:ありがとうございます、すみません。顕微授精の…

刀禰:リスクや問題点でしたり、知っておくべきことがあるということをおっしゃっていたので。

黒田先生:そうですね。まず今おっしゃっていただいたように、顕微授精というのは1匹の精子をピックアップして卵に人工的に人の手を介して注入して受精をさせる方法です。
その1匹の精子の選別基準というのですけれども、現状はですね、正直なところを申し上げると、詳細な、要は科学的根拠に基づいた精子側の情報というのは一切ない状態で、単純に通常の顕微鏡で見てオタマジャクシの格好をしている頭部が楕円形で元気に泳いでいる精子は正常であるという『運動精子=良好精子』という考え方が定着して、その1匹の精子が選定されて顕微授精がなされているんですね。

刀禰:そもそも、それが違うということなんですか。

黒田先生:そうなんです。選定基準というところが今の現状のその理解ですと、そこに大きな落とし穴というかリスクがあると言うことなんですね。
まず結論を先に申し上げてしまうと、ちょっと繰り返しになりますけど、見た目がいい運動精子でも中に隠れた異常がある精子というのがたくさんあるんですね。
実際に不妊治療の現場で治療に上がってくる男性不妊の方の精子というのは、見た目だけではなくて中に隠れた異常を持った隠れ精子異常率の高い精子のタイプなんですね。
具体的に何が隠れて異常かと申し上げますと・・・赤ちゃんの遺伝情報の半分は卵子からですけど、残りの半分50%は精子からですから、精子からのDNAの遺伝情報というのも極めて重要なわけですよね。
ですから、その遺伝情報の根幹になるDNAの構造ですね。DNAそのものが大変傷ついている精子なんだけれども、見た目は大変にきれいなオタマジャクシで元気に泳いでいる精子というのもいっぱいいますので。

刀禰:いっぱいいらっしゃるんですね。

黒田先生:ですので、そこのところが、精子の要は『品質管理』ですよね。をせずにして、1匹見た目で顕微授精を行っているというところに大きなリスクがありますね。

:たくさんの精子の中でも同じ人の精子でも異常があるものもいれば、無いものもいるという。

黒田先生:そうなんです。だから、運よく見た目がいい運動精子で中に隠れ異常がないか、あったにしても軽症である方であれば、運よく顕微授精という手技の元に治療がされてもですね、大きな、生まれてくるお子さんへの影響ということは出ないという可能性はありますね。
ですが、逆にかなり重篤な、今 例に出しましたDNAの傷ついている精子とか、他にもいろんな機能障害の精子とか重篤にある場合というのは、無理無理、顕微授精は人の手を介して受精を可能にしてしまうので、そういった意味では とても怖い治療になるんですね。
だから、1ヶ所でも、DNAを例にとれば傷がある精子というのは受精しては困りますし、妊娠に至って出産した場合に そのDNAの傷が生まれてくる子どもに対してどのような障害を起こす、発症させてしまうかということも、正直なところ、未知の世界というか分かっていない部分もあります。
現状の、見た目で一匹の精子を選ぶという顕微授精には、やはりリスクがあるということは言わざるを得ません。

刀禰:受精卵になった後に何回かやっても正常胚ができないとか、モザイク胚ばかりできて着床前診断をすると素因子が欠けてるとか、染色体がうまくワークしていないみたいな形になりがちなのが、どっちが要因だみたいな。

黒田先生:そうですね、もちろん卵子側からの要因でそういうことにもなりますし、精子側からも今申し上げたようになります。
双方かもしれませんけれども、精子側からの視点で今回お話させていただくと、隠れた所の見えないDNA損傷とかがある精子が顕微授精で受精展開されてしまった場合には、受精した後にですね、卵子側からDNAの傷に対して完全に修復するということができれば いいんですけれども、卵子側のDNA修復機構というのも そんなに大仕事をたくさんできるわけではなくて、本当にわずかな修正をするだけで精一杯なんですね。
ですから不完全なDNAの傷の修復に留まってしまうというのが多いというのも現実の一番怖いところで、不完全修復に終わってしまった受精胚というのはですね、体内環境も含めて妊娠して出産までいくということは起きてまいります。
ですから、途中で流産という形で悲しいけれども、その発生した胚が命とすれば自然淘汰されるという形でブロックがかかれば誕生はもちろんしてこないわけですけど、そこをスルーして生まれてしまった場合というのは、やはり精子側の品質管理ができてないで、隠れた精子異常がとても大きな障害につながる問題に直結するということは十分考えられます。
安全保証の視点から現状の顕微授精のやり方というのはまだ改善の余地がある、リスクがあるということは知った上で取捨選択していかないといけないと思っております。

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