造精機能障害とは?原因や治療方法を紹介

不妊に悩むカップルの多くが女性だけでなく、男性の検査も行うことが当たり前になってきました。男性が最初に受けるべき検査は精液検査で、そこで分かるのが造精機能障害です。
男性の造精機能障害とは、男性不妊の原因の多くを占めるとされ、いくつか種類があり、生活習慣を見直すことや、手術などの治療で症状が改善されることもあります。
造精機能障害の種類や原因、治療方法などについてご紹介します。

造精機能障害とはなにか?

造精機能障害とは、主に精子の質に問題がある状態を指します。

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)

精索とは、精巣より上にある管のことです。精索は、精子の通り道である精管・血管(動脈・静脈)・神経・リンパ管が束になっています。精索静脈には通常は逆流を防止する弁があって、逆流が起きないようになっていますが、つまり瘤が生じて、血液が逆流してしまう状態が精索静脈瘤です。
精索静脈瘤は男性不妊の原因の30%を占めていると言われていて、精子を作る機能の低下、精子の質が悪くなる原因となり得ます。80〜90%の人で左右のうち左側の精索に生じます。理由として、精巣から出る静脈の走行が左右で違いがあり、左側の方が、血液が流れにくかったり、逆流しやすかったりするためといわれています。

無精子症(むせいししょう)

無精子症は、精液の中に精子が確認できない状態を指します。精液検査の結果、精子が確認できなくても、手術を行い睾丸の中に精子が発見できれば妊娠は不可能ではありません。

乏精子症(ぼうせいししょう)

乏精子症は、精子の数が基準の数値よりも少ない状態を指します(精子濃度が1500万/ml未満)。全く精子が確認できないわけではないので、不妊治療を経て妊娠・出産の可能性は充分にあります。

精子無力症(せいしむりょくしょう)

精子無力症とは、精液の中に精子が確認できるものの、運動率が低い状態です。精子運動率が40%未満、前進運動率が32%未満のことをいいます。

対症療法

対処療法としては、人工授精・体外受精、顕微授精、精巣内精子採取術(TESE)などがあります。こちらは、精子の状態や数値によって医師から提案される治療内容が変わってきます。基本的に精子が基準値に少し満たない程度であれば人工授精を。数値に応じて、体外受精、健康な精子が少ない場合には顕微授精を行います。
精液検査の結果無精子症と判断された場合には、精巣内精子採取術(TESE)を行い、精子を獲得したのちに顕微受精となるでしょう。

造精機能障害となる原因、遺伝との関係

近年、遺伝子群が造精機能障害と関係していることが明らかになってきました。男性の性染色体であるY染色体上に存在し、この領域が一部失われると、無精子症や高度乏精子症となることがあります。

造精機能障害の治療方法

造精機能障害は原因不明であるため、根本的な治療は行えないとされています。サプリメントや漢方で補助することは可能です。精索静脈瘤については手術を行うことができるので、早めに検査を行い、早期に発見することが大切になってきます。精索静脈瘤が認められる場合には、手術を行うことで精液検査の所見が改善することが多いです。

造精機能障害の予防

男性不妊の大きな割合を占める造精機能障害は、生活習慣に大きな影響を受けます。日々の生活を見直すことで改善が可能なので、精液検査の結果を受けたらすぐにご自身で気をつけられることが多くあります。
具体的な予防、改善の対策は次の通りです。

  • 炭水化物や脂質の摂りすぎ
    精子は精巣という臓器によって作られるため、健康的な食生活は基本です。
  • 喫煙(加熱式タバコも含めて)
    喫煙は何事においても悪影響を及ぼします。パートナーが妊娠することも考えて早めの禁煙を。
  • 過度な飲酒
    お酒はビール1杯程度に抑えるのが良いでしょう。特に採精の前日にお酒を飲みすぎるとEDなどの原因にもなりえます。
  • 睡眠不足
    適度な睡眠で健康的な生活を目指しましょう。
  • 運動不足、デスクワークが多い
    長時間座ったままはよくありません。適度な運動は精子のためにも大切です。
  • サウナ、長時間の入浴
    精子は熱に弱いので、温めすぎるのはあまりおすすめできません。
  • ノートパソコンをよく太ももに乗せている
    こちらも同様に、精子が温まってしまいます。ノートパソコンはデスクに乗せましょう。
  • 禁欲している
    禁欲は精子が古くなってしまうためおすすめできません、新鮮な状態を心掛けましょう。

まとめ

不妊は女性だけの問題ではなく、男女ともに原因が考えられます。
男性不妊における造精機能の割合は、全体の80%以上と高い割合を示しております。他にEDなども不妊の原因になり得ますが、こちらはマスターベーションで採精が可能ならば不妊治療においては大きな問題にはならないことが多いです。
精液検査の結果、数値が思わしくなかったとしても、医療の力を借りて妊娠・出産の可能性は充分にありますので、落ち込んだりせずに、対処方法について正しい知識をつけて不妊治療に挑みましょう。

生殖医療の必修知識2020,日本生殖医学会編
メディカルノート
https://medicalnote.jp/contents/150306-000003-QUVJQD
恩賜財団済生会
https://www.saiseikai.or.jp/medical/disease/varicocele/
銀座リプロ外科
https://ginzarepro.jp/column/semen_dysfunction/#:~:text=%E5%8E%9F%E5%9B%A0%E4%B8%8D%E6%98%8E%E3%81%AE%E9%80%A0%E7%B2%BE,%E6%97%A5%E5%B8%B0%E3%82%8A%E6%89%8B%E8%A1%93%E3%82%82%E5%8F%AF%E8%83%BD%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

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